すべての協会が資格を出しているわけではありませんが、資格を出している協会が多いのも事実です。
でも協会が出す資格って、そもそも何なのでしょうか?
弁護士みたいな資格とどう違うのでしょうか?
今回は「協会が出す資格」について、整理してみましょう。

資格の性質
おおざっぱにいうと、資格には国家資格と民間資格があります。
まず国家資格ですが、国家資格には
- 業務独占資格
- 名称独占資格
という区別があります。
業務独占
業務独占資格とは
「その資格がなければ業務をしてはいけない」
という性質のもの。
弁護士、医師などが「業務独占資格」に該当します。
弁護士でなければ裁判での弁護人にはなれません。
医師でなければ手術などの医療行為はできません。
そのような性質の資格を「業務独占資格」といいます。
名称独占
名称独占資格とは
「名乗れる資格」
という性質のもの。
調理師、気象予報士などが「名称独占資格」に該当します。
調理師でなくてもだれでも自由に料理を作れますね。
自宅で料理を作って友人に振舞ったとしても、(フグ料理とかでなければ)なにかの違反になることはありません。
でも「調理師」を名乗りたければ調理師の試験に合格する必要があります。
気象予報士でなくてもだれでも自由に天気の話をすればよいですよね。
明日の天気の話をしたからといってなにかの違反になることはありません。
でも「気象予報士」を名乗りたければ気象予報士の試験に合格する必要があります。
禅問答みたいな話ではありますが、「名称独占資格」とはそういう性質のものをいいます。
協会の資格の性質
次に民間資格ですが、協会を作って資格認定をする場合、それは国家資格ではなく民間資格となります。
資格を出している協会が多い事実から分かるように、民間団体でも資格を出すことができます。
許可を取ったり届出をしたりする必要もなく、自由に資格を出すことができます。
ただし国家資格のように法的なバックアップがあるわけではないので、民間資格の効力には限界があります。
協会の資格の限界
民間資格には「業務独占資格」はありません。
協会のような民間団体が「業務独占資格」を作ることはできないのです。
そもそも資格であれ何であれ、勝手に業務独占はできません。
職業選択の自由を保障する日本国憲法に違反するからです。
したがって、民間団体が出す資格には「業務独占」はありえないことになります。
では「名称独占資格」はどうでしょうか。
これも原則、民間資格で「名称独占」はできません。
「当協会の『〇〇アドバイザー』は当協会の会員だけが使えます。他の人は使ってはダメですよ」
と主張したところで、法的な根拠はありません。
ただし例外があります。
適切に商標登録されている場合です。
商標登録されていれば、その商標を使うことができるのは登録した協会だけなので、他の団体は同じ名前の資格を発行することができないことになります。
しかしそれでも、外部の無関係な個人が協会の世話になることなく「〇〇アドバイザー」を名乗った場合、それを法的に止められるかどうかは微妙です。
要するに、国家資格には法律で守られた特権のようなものがあるけれども、民間資格には基本、そういうものはありません。
協会の資格の魅力
にも関わらず世の中には多くの民間資格が存在しています。
民間資格に対する需要があるからです。
法律で守られた特権がなくても、人は民間資格を持ちたがります。
なぜでしょうか。
1つには、たとえ民間資格であってもそれを取ることで「知識や能力があることの証明」に使える場合があるからです。
「柔道5段」という職業はありませんね。
つまり「柔道5段」は業務独占ではありません。
しかし「柔道5段」という資格を持てば「強い人であることの証明」にはなります。
おそらく「強く・正しい人」的なイメージも持たれやすいでしょう。
ガードマンのようなフィジカルを求められる職業にもつきやすくなるし、道場を開いて柔道を教えはじめたとしても不自然に思われることはないですね。
もう1つには、同じ資格を持つもの同士、連帯感が生まれやすいという側面があります。
この連帯感は、なかなか心地よいもの。
「資格を取って終わり」という単発的な資格も多いことは多いですが、それではもったいないと言えます。
同じ資格を持つもの同士のつながりが生まれるように工夫している協会であれば、この「連帯感」も資格の魅力になります。
協会の資格のタイプ
協会が出す資格には大きく分けて2つのタイプがあります。
1つは、「教える免状」に該当する資格。
いわゆる「認定講師」の資格です。
協会が出す認定講師の資格を取った人だけが、協会の講座の講師になれるというものです。
もう1つは、
「学んだことの証明」
「トレーニングを終えたことの証明」
になる資格。
前述した「柔道5段」を例に挙げると、「柔道5段」は教える免状ではありません。
しかし「柔道5段」という資格を持てば、「厳しい練習を乗り越えて強くなったことの証明」にはなりますね。
協会総研では、
- 前者(教える免状タイプ)の資格のことを「認定講師型資格」
- 後者(学んだ証明タイプ)の資格のことを「ソムリエ型資格」
と呼んでいます。
(参考)民間資格の「公的化」
協会の資格はあくまで民間資格ですが、世のため人のためになるような資格であれば、多くの人に取ってもらいたいですね。
民間資格に「公的な性質」を与える方法はいくつかあります。
ここでは「教育訓練給付制度」「社内検定認定制度」を紹介します。
いずれも条件や審査があるので簡単ではありません。
ここに挙げるような「公的な何か」を追い求めるか、それとも、資格本来の価値や知名度を上げるために時間やエネルギーを使うかは、よく考えて選択しましょう。
教育訓練給付制度
ハローワーク(厚生労働省)では求職者に「資格を取ること」を推奨しています。
資格を取ればその人のスキルも上がるし、就職もしやすくなるので、ハローワークが資格取得を推奨するのは当然といえます。
ハローワークには「おすすめの資格リスト」があります。
このリストにある資格を求職者が取得した場合、その費用の一部を国が支援します。
このリストに載っているのはかつては公的資格ばかりでしたが、近年は民間資格もこのリストに載るようになりました。
むろんこのリストに民間資格が載るためには条件もあり、申請して審査を受ける必要がありますが、審査に通れば一定期間、リストに掲載されます。
リストに載るということは、ある意味、「ハローワーク(厚生労働省)に認められた資格」ということになりますね。
社内検定認定制度
自社の社員のスキルアップのために、社員向けに研修などを行い、試験に合格した社員に何らかの肩書を与えている企業を、ときどき見かけます。
「社内資格」「社内検定」などと呼ばれているものです。
たとえば、
- デパートの化粧品売場に「美容アドバイザー」のような社内資格を持つ社員がいて、顧客の美容相談にのっている
などなど。
こうした「社内資格」「社内検定」を、国(厚生労働省)が認定する制度が存在します。
社内検定認定制度と呼ばれます。
むろん認定を得るためには条件もあり、申請して審査を受ける必要がありますが、認定を受けた場合、なんとなく国家資格になったような感じになれるところが面白い点でしょう。
ただしこの制度を活用できるのは「社内資格」「社内検定」の場合のみです。
したがって協会の資格はそのままでは使えません。
たとえば協会の資格を「社内資格」「社内検定」に活用したいという企業と提携して認定取得を目指すなどの工夫が必要です。
民間資格は国家資格になれる?
一般的には「民間資格は国家資格になれない」と思われがちですが、実際には民間資格が国家資格になった事例が存在します。
最近では「キャリアコンサルタント資格」がそうです。
キャリアコンサルタント(通称キャリコン)は、職業選択や能力開発に関する相談・助言を行う専門職です。
この資格は「名称独占資格」に該当します。
すなわち、この資格を持たない人が「キャリアコンサルタント」またはこれに近い名称で活動することは禁じられています。
キャリアコンサルタントはかつては民間資格でしたが、2016年に国家資格となりました。
国家資格になるには、そのための法律が作られる必要があります。
法律を作ることができるのは国会だけですので、民間資格を国家資格にしたければ国会議員に動いてもらわなければなりません。
いわゆる「政治」の領域になります。
まとめ
協会の資格のような民間資格の場合、国家資格のような「法律による特権」がありません。
しかし民間資格といえども、
- 「知識や能力があることの証明」に使える
- 同じ資格を持つもの同士、連帯感が生まれやすい
という効果があるため、存在価値は大いにあります。
なお、民間資格に「公的な性質」を持たせることができる場合があります。
また、法律の制定が必要になりますが、民間資格が国家資格になることも不可能ではありません。