カオスとは
「カオス」という、数学の分野がある。
x の値がほんの少し違うだけなのに、y の値がものすごく極端に違ってしまう。
原因はほんの少し違うだけなのに、結果がおそろしく違う。
そんな関数のことをカオスという。
カオスはもともと数学用語だが、自然界にもカオスは存在する。
例えば湯を沸かすとき。
なかなか沸騰しないなと思いながら水面をながめていたら、突然ブクブクと沸騰した。
沸騰直前と沸騰直後の温度の違いは、実はほんの少ししかない。
沸騰直前の水にわずかな熱が加わるだけで、穏やかだった水面が急に泡だらけになる。
気象もカオスだと言われている。
ニューヨークで蝶が羽ばたいた結果、蝶の周囲の空気の流れがほんの少しだけ変化し、その変化が変化を呼び、ある日、日本に台風がやってくる。
このたとえは、カオスを説明するときによく使われる。
人間社会にもカオスは起こる。
たとえば、朝、ほんの数分だけ寝坊したために、いつもの電車に乗れず、乗り換え駅でいくつもの電車を逃し、やっと電車を乗り換えたと思ったら、3つ先の駅で事故があって、電車は止まったまま立ち往生。
結局オフィスに着いたら30分遅刻だった。
ちょっとの寝坊が大きな遅刻になった。
こんな経験を持つ人は多いかもしれない。
得意先にたった1本の電話を入れるのをうっかり怠ったために、大きなクレームになり、解決するのが困難になった。
そんな経験も、あるかもしれない。
(筆者は、ある)
いずれもきわめてカオス的な現象だ。
原因はほんの少し違うだけなのに、結果がおそろしく違うのだから。
カオス的に考えるとは
「原因はほんの少し違うだけなのに、結果がおそろしく違う」
これをこんなふうに言い変えてみよう。
「結果が大きく違うのに、その原因はほんの少ししか違わない」
この2つが同じ内容を表しているのは、お分かりだろうか。
これは、ビジネスに当てはめると
「成功と失敗との分かれ目が、案外ほんのわずかな差に起因している」
ということを意味している。
だが、この「ほんのわずかな差」を事前に見抜くことはきわめて難しい。
あとになって
「あのときのアレが原因だったな」
と振り返ることはできるだろうが、それを事前に予測するのは困難だ。
この「予測できないほんのわずかな差」を埋める方法は1つしかない。
仮説をたてる→やってみる→仮説を修正する→やってみる→仮説を修正する→…
この繰り返しをやめないことだろう。
繰り返しのプロセスのどこかで、「予測できないほんのわずかな差」がそれと気づかないうちに埋まる。
すると急に、世の中がうまい具合にまわりはじめたように思えてくる。