ある山の「お作法」
「鍋割山」という山が神奈川県にあります。
この山の頂上にある山荘は、鍋焼きうどんで有名。
この鍋焼きうどんを食べたくて多くの登山者がリピーターになっています。
ただし、リピーターが多い理由は、鍋焼きうどんの味だけではありません。
登山者は、ただ単純に山に登ってなべ焼きうどんを食べるわけではないのです。
登山コースの途中に水場があります。
水場には空のペットボトルが何十個も置かれています。
登山者はそこで水を汲み、えっちらおっちら頂上まで運び、山荘で鍋焼きうどんを食べるのがひとつの「お作法」になっているのです。
山荘まで運ばれた水は、山荘を運営するための水となります。
むろん、鍋焼きうどんを作るのにも使われます。
なお、水を運んだからといってお駄賃がもらえるわけではありません。
タダ働きです。
鍋焼きうどんの価格が無料になるわけでも安くなるわけでもありません。
何の得もありません。
水を運んだ登山者は、山頂でふつうに料金を支払い、鍋焼きうどんを食べます。
「お作法」がコミュニティを生む
水を運んだ登山者は、ほどよく疲れているでしょう。
疲れた体にアツアツの鍋焼きうどんは、さぞ美味しいに違いありません。
さらに、登山者は水を運ぶことで
- 「ちゃんと役目を果たせた」という安心感
- 「山荘の役に立った」「みんなの役に立った」という充実感
なども味わっているはずです。
それが鍋焼きうどんの美味しさをいや増すことになります。
水場から山頂まで水を運び、鍋焼きうどんを楽しむという「お作法」。
鍋割山に登る人の多くが、この「お作法」を共有します。
「お作法」を共有することにより、登山者のあいだにちょっとした淡いコミュニティが形成されています。
協会の「お作法」
この状態は協会のありかたを考える参考になるかもしれません。
ポイントは、水を運ぶという「お作法」の存在です。
「お作法」と表現してもよいし、「役目」「役割」と表現してもよいです。
たしかに、山荘で食べる鍋焼きうどんはもともと美味しいです。
しかし、もし、この「お作法」「役目」「役割」がなかったら、いくら鍋焼きうどんが美味しいといっても、これほど多くのリピーターは生まなかったのではないでしょうか。
「お作法」「役目」「役割」がなかったら、コミュニティだって形成されないでしょう。
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あなたの協会には、こうした「お作法」「役目」「役割」はありますか?