ナイフを刺すたびに緊張するオモチャ、「黒ひげ危機一発」。
海賊の親分を閉じこめた樽に刺していき、「当たり(ハズレ?)」を刺したときに親分がびゅーんと飛び出す。
ワーワーキャーキャーいいながらみんなで遊んだ経験のある人は多いだろう。
販売開始が1975年(昭和50年)なので、ロングセラーだ。
このオモチャ、発売当初は海賊を飛ばした人が「勝ち」とされていた。
なぜなら、閉じこめられた親分を助けるゲームだったからだ。
遊び方の説明書にもそう書いてあった。
しかし現在では、「海賊を飛ばしたら負け」というルールで遊ぶケースが多い。
説明書も「飛ばしたら負け」となっている。
調べてみると、説明書は
- 発売当初:飛ばしたら勝ちルール
- 途中の時期:ルール自由
- 現在:飛ばしたら負けルール
という変遷をたどっているらしい。
とあるテレビ番組が「黒ひげ危機一発」を飛ばしたら負けルールで使っていたことも、「負けルール」が広がった理由の一つと言われている。
あくまで感覚的な話だが、「飛ばしたら勝ち」より「飛ばしたら負け」のほうが盛りあがる気がする。
ドキドキ感が違う。
危険をともなわずにスリルだけを味わえるという意味で、ホラー映画を楽しむのと似ているかもしれない。
エビデンスはないが「飛ばしたら負け」に変えてから売上が増えたのではないかと想像している。
冷静に考えてみると、オモチャ自体は何も変わっていない。
海賊の親分を閉じこめた樽に刺していき、「当たり(ハズレ?)」を刺したときに親分がびゅーんと飛び出す、というのは昔から同じ。
変化したのは遊び方だ。
遊ぶ側(人間)の「捉え方」が変わっただけ。
それで売上が変わるのだとしたら、興味深いことだ。
説明書で公式に「飛ばしたら負け」の意思表示をしているのも重要かもしれない。
「飛ばしたら勝ち」時代にだって、逆の負けルールで遊んでいた人はいただろう。
どう遊ぼうと自由だ。
しかし人間は、「自由」をつきつけられることを嫌うことがある。
たとえば小学生の夏休みの宿題の定番、自由研究に四苦八苦した経験をお持ちの人も多いだろう。
「好きなものを自由に研究しろ」と指示されても、あまりに自由だとかえって事が進まない。
何を研究すればよいのか、テーマを決めるのに時間がかかり、決まらないうちに夏休みの大半が過ぎてしまう。それは夏休みあるあるだ。
なので、自由にはしない。
「どう遊ぼうと勝手だけど、正式にはこういうルールだから」と設定しておくことには、意味や効果があるのだろう。
追伸:「ききいっぱつ」は四字熟語としては「危機一髪」の表記が正しいが、「黒ひげ危機一発」はあえて「発」の字を使う。