世の中には「会社をやめて起業したい人」もいれば、「会社にいながら副業したい」人もいます。
どちらが良いかは、いちがいに言えません。
それぞれ、メリット・デメリットがありますし、合う、合わないもあるでしょう。
今回は、「副業として協会をやれるか?」について解説します。
副業禁止の就業規則が(今でも)多い
会社勤めをしている場合、たいていの会社には「就業規則」というものがあり、すべての社員はそれに合意していると見なされています。
(合意した覚えがない、という人も世の中けっこう多いのですが、そういう労務問題にはここでは触れないことにします)
その就業規則に「副業禁止」が書かれていれば、社員は会社に無断で副業できません。
で、実際のところ、就業規則のほとんどに「副業禁止」が書かれています。
その状態で社員が副業するには、会社の許可をもらう必要があります。
たまに会社勤めの人が
- 講演をして報酬を受け取ったり
- 本を出版して印税を受け取ったり
していることがありますが、会社から了解を取って堂々とやっているのが普通です。
(会社に黙って発覚しないようにこっそりやる人もいるにはいますが)
近年は「働きかた改革」という旗印のもと、で副業禁止を撤廃しようという経済界の動きも見られますが、副業が社会の常識になるかどうか、まだまだ不透明です。
協会は趣味なのか副業なのか
ところで「副業」と「趣味」を比較すると、ひとつには
- 副業=なんらかの肩書がある
- 趣味=とくに肩書がない
という違いが考えられます。
またひとつには、
- 副業=報酬がある
- 趣味=報酬がない
という違いも考えられます。
したがって、副業で協会を作る場合でも、
「役員にならないし報酬ももらわない」
ということなら、趣味だと言い張ることができそうです。
しかし「役員になって報酬をもらう」ということであれば、これを趣味だと言い張ってもなかなか通じないでしょう。
この場合、原則的には勤務先の会社の許可を得たほうがよいと考えられます。
つまり、協会を作るだけなら問題になりませんが、協会の役員になる場合は注意が必要です。
協会の役員になるには注意が必要
けれども、堂々と会社の許可を得られればよいのですが
「協会を作って役員になります」
という社員に対して、会社がやすやすと許可を出すとは実際には考えにくい。
というのは、「協会を作って役員になります」という社員の言葉は、会社の経営側からみると
「会社の仕事は適当に手を抜きながら、本音は協会の運営に力を入れたいでーす」
というふうに聞こえるからです。
そうは言ってなくても、そんなふうに聞こえます。
例外的にその「作りたい協会」がたまたま会社のビジネスに役立つようなものであれば、
「会社が協会を作ってあげるから、あなたが役員になって担当しなさい」
という展開になることが可能性としてはあります。
そうなれば協会は副業ではなく、会社の本業になりますので、堂々と協会を作ることができます。
とはいえ、そう言われる可能性は高くはありません。
たとえそう言われたとしても、将来人事異動で協会の担当を外されることだって想定できます。
安全に役員になる裏ワザ
協会の役員になることに会社が許可をなかなか出さないといっても、「逃げ道」がないわけではありません。
たとえば
- 会社勤めの人が町内会の役員になることを会社は禁止できません。
- 会社勤めの人がPTAの役員をするのを会社は禁止できません。
- 会社勤めの人が週末の草野球チームの監督になることを会社は禁止できません。
たとえ多少の謝礼が出たとしてもです。
なぜなら、こうした「近所づきあい」「趣味の一環」みたいなことは一般的に副業と見なせないし、謝礼だって少ないからです。
副業とはみなされないので、そもそも
- 町内会の役員になる
- PTAの役員になる
- 草野球チームの監督になる
といったことをわざわざ会社に報告して許可を取ることも、ふつう、しません。
そこは自由とされています。
したがって協会を作って役員になったとしても
「同好の仲間と一緒に趣味の協会を作って理事になっただけで、報酬はゼロに近い」
という程度であれば、
「週末の草野球の監督」
と変わりませんから、会社からとやかく言われる筋合いはありません。
前述したようにそもそも報告する必要もありません。
(ただし、協会活動に夢中になりすぎて、会社の欠勤が増えたりするような場合は、トラブルになる可能性があります)
決断のときが迫る
問題は、協会の活動が「週末の草野球の監督」のレベルを超え、
「まっとうな理事報酬が支払われるようになった場合」
のときです。
言い換えると
「その金額はもはや『謝礼』ではなく『給料』ではないか」
と言われてしまうような場合です。
これは協会の活動が大きくなっている証なので、本来は喜ばしいことかもしれません。
ですが、まっとうな理事報酬を継続的に受け取っている状態になれば
「会社に黙って副業をしている」
「会社に黙って別のところから給料を取っている」
と会社から疑われるリスクが高くなります。
そうなった暁には
- 協会からの報酬を辞退する
- 会社を辞めて協会に本腰を入れる
- 許可を得るために会社を説得する
どれかを選ぶ必要が出てきます。
ただし3番目の「許可を得るために会社を説得する」は、前述したようにかなり困難でしょうね。
なので実際には「会社を取るか」「協会を取るか」の二者択一を迫られることになります。
まとめ
副業禁止の会社は減りつつあるようですが、いまでも多数を占めています。
趣味的に協会をやるのは副業禁止に抵触しないと思われますが、協会の役員になって報酬を得るということになれば副業とみなされ、会社によってはトラブルになる可能性があります。
協会が大きくなれば、もはや「趣味です」とは言い切れなくなります。
そのときは、会社か協会か、どちらかを選ばざるをえません。