協会にメディアの取材依頼がきたら
協会をやっていると、ときに(または、しばしば)メディアの取材を受けることがあります。
協会は「中立的な専門機関」のように見られやすいので、取材をする側も、会社を取材するより協会を取材するほうを優先的に選ぶ傾向があります。
たとえばメディアの人が取材をしようとして検索し、「株式会社」と「協会」両方が出てきたら、通常は「協会」を先に取材するでしょう。
つまり協会は比較的取材されやすいのです。
せっかくそういう性質があるので、うまく活用できるとよいですね。
さて、取材の打診があったときのあるあるを1つ。
取材の打診を受けて、理事長さんが自ら対応してしまうことがよくあります。
「協会を取材するんだから、自分(理事長)が応対するのは当然」と思うのでしょう。
もしくは、無意識にそう思いこんでいるのでしょう。
でも、本当に「理事長が応対するのは当然」なのでしょうか。
冷静にいちど立ち止まって
「これは自分が出るべき案件だろうか?」
を考える癖をつけることをお勧めします。
なぜならメディアの取材は、会員に表に出てもらうよい機会だからです。
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ある協会での出来事。
雑誌社からインタビューの話がありました。
理事長はインタビューの目的を聞いた結果、「自分が応じなくてもよさそうな内容だ」と判断。
会員にインタビューに出てもらうことにしたそうです。
その会員を仮に佐藤さんと呼ぶことにしましょう。
佐藤さんは緊張しましたが一生懸命に取材に応え、よい経験になったそうです。
しばらくたってそのインタビューの掲載された号が発売されました。
取材があった場合、記載された号を1冊、記念に送ってくれる雑誌社もあります。
「配ってください」という意味で何冊も送ってくれる雑誌社もあります。
その雑誌社は3冊送ってくれましたが、理事長さんはこのうち2冊を佐藤さんに渡してこう言いました。
「1冊は自分の思い出に、もう1冊を実家のご両親に送ってあげたらどう?」
実家が遠くて1年以上帰省していない佐藤さんにとって、その一言はとても嬉しかったそうです。
子どもが活躍する様が雑誌に出ていたら、親御さんも喜ぶでしょうね。
佐藤さんは協会のことがますます好きになりました。
取材や活動の機会などを会員にシェアするのは有効ですし大切でもあります。
たとえば前述の佐藤さんですが、この話には続きがあります。
たまたまその雑誌のインタビュー記事を読んだある自治体から、佐藤さんに取材の打診がありました。
その自治体で配布しているフリーペーパーに佐藤さんを載せたいというもの。
取材が取材を呼ぶ、ということはときどきあります。
すると佐藤さん、そこでどうしたかというと、
「自分よりもっと適任がいますよ」
自分ではなく、知り合いの別の会員を推薦したのです。
その会員の名前を仮に田中さんとしましょう。
田中さんはたまたまその自治体に近いところに住んでいました。
自治体側にとっても、より近いところに適任の方がいるなら、それはそれで異存はありませんでした。
推薦された田中さんも大いに喜び、ワクワクする気持ちでインタビューに臨みました。
▽
佐藤さんとしては、
「たとえ交通費が出るとしても、自分が出かけるのはちょっと面倒」
「その自治体で名前が売れても自分にはメリットがない」
だから田中さんに譲ろう、といった計算も働いたかもしれません。
でも、以前に自分がインタビューの機会をもらって心が躍ったこと、「実家のご両親に送ってあげたらどう?」と言われて嬉しかったことを思い出し、同様のことを他の会員にシェアしてあげたい気持ちも大きかったでしょう。
こうして、
会員である佐藤さんが、会員である田中さんに活躍の機会をシェアする
という
「自発的な善意の連鎖」
が生まれます。
協会としては、自分たちの知らないうちに会員が活動し、協会の知名度も上がるという結果につながります。
「取材や活動の機会などはできるだけ会員に花を持たせよう」
という協会の姿勢が、めぐりめぐってこうした結果を生む、というわけです。
情けは人のためならず、ということわざに近いものがありますね。