人が協会に「入会」するには、
- 入会申込書を提出する(必要があれば、その後に入会金や最初の年会費を払う)とか
- 協会が開催する養成講座(資格講座)を受講し、認定を受けるとか
といった手続き(儀式といってもよい)になるのが典型的です。
いずれにせよ、ふつうはこの手続き(儀式)のことを世間では「入会」と呼びます。
ところがこれを「入会」ではなく
「条約」
と呼ぶ風変わりなケースがあるので、紹介したいと思います。
条約とは①
その前に、国際政治の話を。
欧州連合(EU)って、ありますよね。
現在27ヶ国が加盟する経済同盟です。
ある意味、協会みたいなものです。
ロシアと戦っているウクライナは、そのEUへの加盟を申請中です。
EUに入るには、「条約」を結ばなくてはなりません。
いいかえれば、「条約」を結べば、EUという「協会」に「入会」することができるわけです。
「条約」は、国家が同盟みたいなものに入るための手続き(儀式)だといえます。
北大西洋条約機構(NATO)っていうのも、ありますよね。
アメリカを中心とした軍事同盟です。
これもある意味、協会みたいなもの。
ロシアと戦っているウクライナは、そのNATOへの加盟も望んでいます。
NATOに入るには、「条約」を結ばなくてはなりません。
いいかえれば、「条約」を結べば、NATOという「協会」に「入会」することができるわけです。
条約とは②
通常の「条約」は、国家と国家(つまり政府と政府)が約束をしたり、取り決めをしたりして、結ぶものです。
- 「日米安保条約」みたいに、2国間で結ばれるものもあります
「ワシントン条約(※)」みたいに、複数の国家で結ばれるものもあります。
※絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する条約。たとえば象牙は高く売れるため多くのゾウが密猟の犠牲になっています。ワシントン条約は象牙の貿易を厳しく規制しています。
いずれにせよ、ふつう、条約の当事者は国家(政府)です。
個人が条約を結ぶなんて、思いもしません。
これに対し、これから紹介する事例は、
「個人が条約を結ぶ」
というものです。
正確にいえば、個人だけでなく自治体や各種団体(企業も含む)も条約を結ぶことができるようになっています。
協会でも「個人会員」「法人会員」を設定している場合があるのと似ています。
条約=入会?
その「個人でも結べる条約」、名前は
「プラントベース条約」
といいます。
プラントベースとは、大雑把にいうと
「肉食を減らし、できるだけ野菜や海藻やキノコなど植物性の食品を食べようよ」
というスローガンみたいなもの。
数年前から地球規模で流行っています。
菜食(ベジタリアン)に似ています。
「ゆるベジ」みたいなものでもあります。
詳しくは「植物性料理研究家協会」という協会があるので、そこに聞いてください。
話を戻します。
プラントベース条約は、名前こそ「条約」という重々しいものになっていますが、実際は、「肉食を減らそう」という主旨の、草の根運動です。
「プラントベース条約」という名前の団体が、この運動をリードしています。
草の根運動なので、個人でも入会できます。
「プラントベース条約」という名前の協会に、入会することになります。
入会、と書きましたが、正しくは「個人でも条約を結ぶことができます」。
「条約」にサインすることが、入会手続きに該当します。
この条約を結んだ人(=入会した人)は、
肉食を減らすことを通じて、
*動物愛護
*地球環境保護
に可能な範囲で貢献しなさい
というルールになっています。
つまり役割があるわけですね。
会員に役割があるという意味でも、この「条約」は「協会」と本質が同じです。
2022年12月現在、この協会には個人・法人あわせて7万の会員がいます。
正しく表現すると、2022年12月現在、7万の個人・法人が「この条約を締結しています」。
ちなみに、今年のサッカーワールドカップ優勝国はアルゼンチンでしたね。
アルゼンチンの首都はブエノスアイレス。
ブエノスアイレス市はこの協会の会員です(=条約を締結しています)。
以上、「入会」のことを「条約」と呼ぶ、ユニークな協会の事例でした。