今回は、協会を設計する際にときどき使う、「境内理論」というちょっと変わった思考のフレームワークについて紹介します。
お賽銭の不思議
私たち日本人の多くは、正月になると神社に出向き、参拝をします。
もちろん、正月でなくても神社に出向いたときは、参拝をします。
参拝するときは、お賽銭箱にお金を投げ入れます。
では私たちは、なぜ、お賽銭を払うのでしょうか?
通常、人がお金を払うのは、対価があるからです。
そもそも、お金とは交換の媒体です。
お金を払って得るものがあるから、お金を払います。
- お金を払って、電車に乗る。
- お金を払って、飲食店で食事をする。
- お金を払って、洋服を手に入れる。
- お金を払って、映画を観る。
- お金を払って、マンションに住む。
などなど。
いずれも、何かを得るためにお金を払います。
では、神社の場合はどうでしょうか?
お賽銭を払うことで、私たちは何を得ているでしょうか?
- お賽銭を払っても、どこにも移動できません。
- お賽銭を払っても、空腹は満たされません。
- お賽銭を払っても、品物はもらえません。
- お賽銭を払っても、(映画を観るような)楽しい時間にはなりません。
つまり、世俗的な意味では、何も得るものがありません。
にも関わらず、私たちはお賽銭を払います。
では私たち日本人が神道に対する宗教心が強いかというと、おそらくそうではありません。
にも関わらず、私たちはお賽銭を払います。
- お賽銭を払うことは、だれにも強制されていません。
- お賽銭を払わなくても、ペナルティはありません。
- お賽銭の金額には、何のルールもありません。
にも関わらず、私たちは「あたりまえ」のようにお賽銭を払います。
このように、お賽銭というのは、不思議なものです。
じつは、ここを考えることが、協会の運営にも役に立つのです。
神社ビジネスという仮想ビジネス
ここで、かりに、「神社ビジネス」という仮想ビジネスを考えてみます。
そして、神社ビジネスの目的を
「いかにお賽銭収入を最大化するか」
だとしてみましょう。
あなたなら、お賽銭収入を最大化するポイントは、どこだと思いますか?
お賽銭には、ある特徴があります。
それは
「鳥居をくぐって境内に入った人は、必ずお賽銭を払う」
というものです。
よほど特殊な事情がない限り、いったん鳥居をくぐって神社の境内に入った人が、お参りをしない(=お賽銭を払わない)で帰ってしますことは、まず、ありません。
境内に入ったほぼ100%の人が、お参りをします。
すなわち、お賽銭を払います。
つまり、
「境内に入ることと、お賽銭を払うことは、ほぼイコール」
だと言えるわけです。
お賽銭というキャッシュポイント
- 境内に入る
- お賽銭を払う
この両者がほぼイコールだとすれば、お賽銭収入を増やすためには
「境内に入る人を増やせばよい」
「鳥居をくぐる人を増やせばよい」
ということになります。
では、境内に入る人を増やすには、どうしたらよいでしょうか。
ここで、神社の境内が人でにぎわっている場面を想像してください。
神社の境内が人でにぎわっているのは、どんなときでしょう?
答は「縁日やお祭りのとき」です。
縁日やお祭りのとき、神社の境内にはさまざまな屋台が出ていますね。
- たこ焼きの屋台
- お面を売る屋台
- 金魚すくいの屋台
- 綿あめの屋台
- 焼きそばの屋台
- 吹矢で景品を当てる屋台
など、いろいろな屋台が集まっています。
屋台が多いほど、人は境内に入ります。
境内に入り、いくつかの屋台に立ち寄りながら、その過程のどこかで神様に参拝し、お賽銭を払うのです。
つまり、
境内に屋台をたくさん配置することで、境内に人が入る。
境内に人が入りさえすれば、遅かれ早かれ、お賽銭を払う。
ということになります。
境内理論
「境内理論」とは、
人はなぜお賽銭を払うのか
を、協会の戦略に応用するための思考のフレームワークです。
これまでの考察から分かったのは、
- 境内に屋台をたくさん配置することで、境内に人が入る。
- 境内に人が入りさえすれば、遅かれ早かれ、お賽銭を払う。
ということでした。
お賽銭をもらう側、すなわち神社の側からすれば、
「境内に屋台をたくさん配置し、それにより人を境内に呼びこむことが、お賽銭収入の最大化につながる」
となります。
これが、境内理論の本質になります。
境内理論の実践
境内に入るためには、鳥居をくぐる必要があります。
実際には鳥居をくぐらなくても、物理的に境内に入ることは可能です。
鳥居の外側を通って境内に入ればよいわけですから。
しかし多くの人は、鳥居をくぐったことによって初めて「境内に入った」という実感を持ちます。
鳥居の外側を通って境内に入った場合でも、「正式に入った」という気持ちにはならないので、結局はあらためて鳥居をくぐりなおすことになります。
したがって、
- 「まずは鳥居をくぐってもらう」という手続き
- 「まずは鳥居をくぐってもらう」という儀式
を用意します。
したがって、
【1】あなたの協会にとって、鳥居に該当するものは何でしょうか?
「境内」の定義ができたら、次にすることは、屋台を増やすことになります。
【2】あなたの協会にとって、「屋台」とは何でしょうか?