ある食品会社が主婦を集めて座談会を開いたときのこと。
司会者が「どんな食品を買いたいか」という質問をしたところ、出席者たちは
「低カロリーのもの」
「ヘルシーなもの」
「オーガニックなもの」
と口を揃えて答えた。
だが、そのあと彼女たちは座談会の帰りにみんなでジャンクフードを食べて帰った…。
そんな、落語のような話をたまに聞く。
ようするに、
- 意識していること(言葉として出てくること)
- 無意識・潜在意識に思っていること
この両者は必ずしも一致しない。
座談会の場では
「健康的な食品が欲しい」
と、よそいきの回答をする。
そう言っているときはおそらく本気でそう思っているかもしれない。
しかし実際に買い物をする段になると、異なる行動をする。
なので食品会社の側も、
「座談会でみんな言ってたように、やはり求められているのは健康的な食品だな」
とバカ正直に解釈しないように気をつけなくてはいけない。
▽
婚活セミナーを主宰している人からこんな話を聞いた。
そのセミナーは盛況で、満足度が高く、リピーターも多い。
よく考えると、これはおかしなことだ。
婚活セミナーにリピーターが多いのは、
「恋愛ができていない」
「結婚できていない」
つまり、セミナーの効果がなかったということでもあるからだ。
セミナーの内容が悪いわけではない。
というか、とても良い内容になっている。
イメージコーディネーションの話などは婚活していない人にも聞かせたいほどだ。
だからこそ満足度が高い。
受講者からは、
「とても勉強になりました。セミナーを通じて婚活仲間もできました。これからもよろしくお願いします」
という声が返ってくる。
よく考えると「婚活仲間もできました」も、ちょっとおかしい。
婚活セミナーで仲間をつくって、どうするんだよ。
なので、
「婚活仲間など作らなくていいから、このセミナーで自分を磨き、よいパートナーを見つけてさっさと卒業してほしい」
そう考えている主宰者としては、複雑な思いだという。
くりかえすが、この
「なかなか結婚できない婚活セミナー」
は、人気で、リピーターが多い。
ビジネスとしてはうまくいっている。
ここまでで述べた
- 食品会社の座談会
- 結婚できない人気婚活セミナー
の事例で言いたいのは、「常識を疑え」ということだ。
世の中には
「メリットがないと売れない」
と思いこんでいる人がおおぜい、いる。
そういう人に言わせると
「健康メリットがないと食品は売れない」
「結婚できない婚活セミナーはだめだ」
ということになるのだろう。
そういう人は、協会や資格講座に対しても
「メリットがないと人は会員にならない」
「仕事にならないと人は資格を取らない」
と主張する。
だが実際は、必ずしもそうではない。
「結婚できない人気婚活セミナー」は、
ほんとうに結婚したいのかどうか自分でもよくわからない人が、「結婚できないと孤独になる」などとメディアであおられたり、「いい年齢なんだからそろそろ家庭を持ちなさい」と周囲からあおられたりして、不安な気持ちになっていたところ、婚活セミナーに参加してみたら自分と同じように「あおられて不安になっている人」と知り合うことができ、やすらぎを得ることができた。
それが良くて婚活セミナーのリピーターになっているのかもしれない。
「結婚できてこそ、婚活セミナーだ」
という常識は、必ずしも正しくないかもしれない。
▽
あなたの「常識感覚」はどうだろうか。
「メリットがないと人は会員にならない」
「仕事にならないと人は資格を取らない」
という常識にとらわれていないだろうか。
じつのところ、会員から
「協会の資格を取ったけど仕事にならないじゃないか」
という批判を受ける協会は多い。
こういう文句が出てくるのは
「資格を取って仕事にしたい人」
が会員になるように協会を作ったから。
「資格取得にかかった金額を
その後の仕事で回収したい」
と考える人を対象にして協会を作ったから。
「資格を取れば仕事になりますよ」
という触れ込みで会員募集をしたから。
心の充足ではなく、仕事のメリットでさんざん期待させたから。
そういう協会にしてしまった以上、そのとおりにならなければ批判が出てくる。
無理もないことだ。
ではなぜ、そもそもそんな協会を作ってしまったのかというと、協会を作る側に
「メリットがないと人は会員にならない」
「仕事にならないと人は資格を取らない」
という強い思い込みがあったからだ。
本当にそうなのか、よく考えてみよう。