「協会を作りたいけど、声をかけた仲間が なかなか動いてくれない」
「協会を作ったけれど、理事の人たちがなかなか動いてくれない」
「協会を作ってしばらくたつけれども、会員たちがなかなか動いてくれない」
こうした悩みを抱えている理事長は少なくありません。
その結果、理事長だけが一生懸命に動く、個人事業のような協会になってしまいます。
今回は、この問題に対処するヒントを紹介します。
「わたし」と「わたしたち」
スピーチを学んだ欧米人は、主語として
「わたし(I)」ではなく、
「わたしたち(we)」を使うといいます。
日米の政治家の演説を比較してみると、アメリカの政治家は we を連発しています。
けれども日本の政治家が「わたしたち」を使うのはほぼゼロだそうです。
「わたしたち」を使うと何がよいのか。
「わたしはこうするつもりだ。みなさん、賛同してください」
と言えば、「わたし」と「みなさん」とのあいだに線引きや溝が生まれます。
話し手と聞き手は、別々の視線になります。
「わたし」は頑張るけど、「みなさん」はそれをただ暖かい目で見ているだけになります。
いっぽう、
「わたしたちはこうしようよ」
と語りかければ、相手は「自分もそうする」と思いやすいですね。
他人事ではなく、自分事だと感じます。
話し手と聞き手の視線方向が、同じになるからです。
「わたし」と「みなさん」の区別がなくなり、全員が「わたしたち」でくくられます。
会議の場で「わたしはこうする」しかこれまで言わなかった会社社長が、
「わたしたちはこうしよう」
という言い方に変えたとたん、社員が積極的に発言するようになった…
そういう実験結果もあります。
主語を複数形にしよう
協会の理事長には、ぜひこの違いを理解し、技法として使ってもらいたいです。
主語を「わたし」ではなく「わたしたち」に変える。
演説で使うのではありません。
理事長といえども政治家ではないから、演説をする機会はそんなにないでしょう。
むしろふだんの会話に注意をはらいます。
理事長のふだんの会話が「わたし」でできあがっているとすれば、
- 話し手である理事長
- 聞き手である会員
とのあいだの溝は、しらずしらずのうちに大きくなっています。
「がんばる理事長」を「何もせず暖かく見守る会員」。
そういう構図になります。
だから会員は動かない。
問題意識を共有できなくなっています。
そこで、意識的に「わたしたち」を使うことで、これまで動かなかった会員の心がほぐれ、動きだすようになります。
たかが言葉、されど言葉です。
まとめ
本記事では、組織のリーダーが直面する共同体意識の欠如に対処するために「わたし」から「わたしたち」へと主語を変える効果を解説しました。
主語を単数形から複数形へ変えることで、リーダーとメンバー間の溝を埋め、組織の一員としての関与を促し、協働の精神を育むことができます。
単なる言葉の選択が、組織内での動きや意識改革に大きな影響を及ぼすのです。